東京地方裁判所 昭和43年(借チ)2035号 決定
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〔決定理由〕三、当事者間の利益の衡平を図るための附随の処分の要否について考える。まず、財産上の給付の点について、鑑定委員会の意見は、借地権価格の上昇利得は借地人において独占せず、衡平の原則から、地主にもその一部を還元分配する必要があるとして、本件土地の更地価格を一平方米当り一一万円と評価し、借地権価格は、更地価格の七〇%に当る七万七、〇〇〇円で、本件土地の借地権価格の総額は八五九万三、〇〇〇円(一、〇〇〇円未満切捨て。以下同じ。)となるが、前記契約時以降の市街地価格推移指数の平均上昇率は一、〇〇〇%であるから、その後の借地権価格の上昇分は七七三万三、〇〇〇となりその一〇%に当る七七万三、〇〇〇円を申立人から相手方に支払わせるべきであるとしている。本件資料によれば、申立人は昭和三〇年九月二三日当時の借地人山本喜之輔から代金八五万円で本件土地の賃借権を譲り受け、右山本は相手方に対してその際一〇万円を支払つて、ここに申立人は相手方との間で前記の如き新たな契約を締結したものであることが認められ、右八五万円は本件土地の当時の更地価格の約六九%に当るので、現在の借地権価格を更地価格の七〇%とする右意見は相当である。そして、現在の借地権価格のうち前記契約後の上昇分は土地の需給関係その他の社会経済的事情の変動によるものであり、また当事者間に本件賃貸借契約関係が継続する限り、これは潜在的な価格にすぎず、右契約関係が期間満了あるいは契約更新後の建物の朽廃によつて消滅する場合には、賃借人が右借地権価格を現実に利得する機会はないのである。したがつてここに賃借権の譲渡の許可を受けて賃借人が投下資本を回収するに当り、現在の借地権価格の上昇分を全額賃借人に利得させることは地主たる賃貸人との関係では衡平を失すると考えられるので、その一部を賃貸人に配分すべきである。そして配分の割合について、鑑定委員会は前記のとおり、借地権価格上昇分の一〇%に当る七七万三、〇〇〇円を相当とするのであるが、前記のとおり、申立人が前賃借人から賃借権を譲り受けるに当つては譲渡価格八五万円の11.7%に当る一〇万円が相手方に支払われていること、その他本件土地の賃料が低格であつたことなどの事情を併せ考えると、右金額は高額にすぎるとはいえない。そこで申立人は賃借権譲渡の条件として、相手方に金七七万三、〇〇〇円を支払うべきものとするのが相当である。
また賃料については、本件土地の状況その他の事情を考えると一カ月二、五九九円は低格であると考えるので、鑑定委員会の意見を採用し、本裁判確定の日の属する月の翌月から一箇月金五、三一二円とするのが相当である。(福嶋登)